分類学が進展するにつれて、同種と思われていた種が別種であることもあれば、別種と思われていた種が同種と判明することもあります。
また、近年の研究によって、長らく謎の存在とされていた種の正体が明らかになるケースも少なくありません。
7月31日付で『Biologia』に掲載された論文「Morphology and habitat of Euglesa casertana populations in Yakushima Island, Japan, with implications for its taxonomic status (Mollusca: Sphaeriidae)」で正体が明らかになった屋久島の高地のみに生息する二枚貝も、そんな事例の1つです。
長年謎に包まれた種
分類学では研究が進むにつれて、同種とされていた種が別種とされることもあれば、別種と考えられていた種たちが同種と判明することもあります。
近年の研究では、新たに得られた形態的・遺伝的な知見によって、長いこと謎に包まれていた種の正体が明らかになることも少なくありません。
屋久島の高地に生息する二枚貝
屋久島の高層湿地で1995年に初めて報告されたハベマメシジミという二枚貝がいます。
屋久島(提供:PhotoAC)本種は年間を通して涼しい、屋久島の標高約1600メートルのみに生息すると考えらえられていた固有の未記載種です。本種はその稀少さ故に、鹿児島県においては絶滅危惧種に選定されています。
一方、ハベマメシジミの詳細については、長らく謎に包まれており、近年のDNA分析では世界中に分布するハイイロマメシジミと近縁である可能性が示唆されていました。
低地でハベマメシジミを発見
そうした中で、東京大学大学院理学系研究科の澤田直人特任研究員らの研究グループは、屋久島の標高10メートル程の低地でハベマメシジミの個体群を新たに発見。計4個体群の形態的および遺伝的特徴の比較を行いました。
また、これまでハベマメシジミは冷たい環境のみに生息すると考えらえていたことから、低地の生息地における水温と水位の変化も調査されています。
ハベマメシジミとハイイロマメシジミは同種
比較の結果、屋久島のハベマメシジミは典型的なハイイロマメシジミと比較して蝶番がやや狭いこと、独自のハプロタイプ(DNAの配列によって区別される遺伝子タイプ)を持つことが明らかになっています。
一方、形態的および遺伝的な情報を統合すると、ハベマメシジミとハイイロマメシジミの差異は僅かだったようです。こうしたことから、この研究によってハベマメシジミとハイイロマメシジミは同種であると結論付けられました。
また、本種が発見された低地では、水温が約27度まで上昇しても生息していたことから、屋久島においてはハイイロマメシジミが、考えられていた以上に幅広い環境に生息できることも明らかになっています。
保全重要性を見直す必要も
今回の研究によって長年、謎に包まれていたハベマメシジミがハイイロマメシジミと同種であることが明らかになりました。
屋久島はハイイロマメシジミの南限記録とのことです。
また、本種が新たに低地でも発見されたことから、保全重要性を見直す必要性があるとされています。
(サカナト編集部)