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学名は“糞を食べる者”? 名前は変だが美味しい魚<クロホシマンジュウダイ>を食べてみた

標準和名で“黒い星がある饅頭みたいな魚”……と聞くと、なんだかとても美味しそうに思えます。

一方、“糞を食べる者”という学名はとても美味しそうに思えず、食べるのにも抵抗があります。

そんな変わった名前をもつ魚、クロホシマンジュウダイが我が家にやってきたので、食べてみました。

クロホシマンジュウダイとは

クロホシマンジュウダイ Scatophagus argus (Linnaeus, 1766)はスズキ系・クロホシマンジュウダイ科に含まれる魚です。

クロホシマンジュウダイ科の魚は世界で2属4種ほどが知られており、そのうち日本にはクロホシマンジュウダイ属のクロホシマンジュウダイのみが知られています。

分類学的には名前の通りニザダイ亜目のマンジュウダイ科の魚と近いものとされましたが、Nelsonほか(2016)ではクロホシマンジュウダイ科とマンジュウダイ科は離れた位置に置かれました。

クロホシマンジュウダイ(提供:PhotoAC)

しかしながら、フィリピンのFishbase(2026年8月閲覧)では、マンジュウダイ科もクロホシマンジュウダイ科も同じAcanthuriformes(ニザダイ目)の中に含まれています。

また、クロホシマンジュウダイとチョウチョウウオ科魚類の関係も指摘されてきました。

クロホシマンジュウダイの稚魚期は頭部が骨板でおおわれている「トリクチス幼生」の期間を経るのですが、このトリクチス幼生はチョウチョウウオ科にも見られる特徴なのです。

チョウチョウウオのトリクチス幼生(提供:椎名まさと)

先述の「Fishbase」においては、クロホシマンジュウダイ科やニザダイ科、アイゴ科などが含められている目であるAcanthuriformesの中にチョウチョウウオ科も含められています。

クロホシマンジュウダイは毒がある

クロホシマンジュウダイを扱う際の注意点として、背鰭・腹鰭・臀鰭にある棘があげられます。これらの鰭の棘には毒があるとされているためです。

クロホシマンジュウダイの背鰭棘(提供:椎名まさと)

本種に近い仲間としてアイゴ科の魚が知られていますが、この科の魚も鰭棘に毒があるとされており、刺されると激しく痛むことで知られています。

クロホシマンジュウダイも、アイゴ同様、釣れても素手で触れないよう注意しましょう。

<クロホシマンジュウダイ>のユニークな名前

「クロホシマンジュウダイ」という標準和名は黒い星がある饅頭のような魚、というイメージで美味しそうに思えます。

では、学名の「Scatophagus」はどうでしょうか。属学名はなんと、「糞を食べるもの」という意味になります。

この魚はもともと河川の河口域や内湾などの水が濁った場所で多く見られる魚で、汽水域などで人糞を食べる様子からこの名前がついた──とされていますが、基本的には藻類や小動物を捕食するとされます。

本種の主な生息環境がこのような状況なので、餌を探すのには視覚よりも嗅覚に頼ることが多いかもしれません。同じような環境にすむクロダイなども、強烈な匂いのする餌で魚をおびき寄せて釣ります。

クロホシマンジュウダイは河川河口域でもよく見られる。写真は宮崎県大淀川河口(提供:椎名まさと)

なお、本種は観賞魚の世界では古くから知られている魚で、昔は属学名そのまま「スキャットファーガス」という名前で流通していたこともありました。昔からの愛好家はいまでもこの仲間を「スキャット」と呼ぶことがあります。

一方、東南アジアや香港、オーストラリアなどの魚市場では「Butterfish」という名前でも呼ばれており、食用とされています。さすがに「糞を食べるもの」ではマーケットでは売れないのでしょう。ただし、この英語名は大西洋産のマナガツオ科の魚 Peprilus triacanthus (Peck, 1804)などの種を指すこともあり、注意が必要です。

クロホシマンジュウダイを食べてみた

さて、そんなクロホシマンジュウダイが丸ごと一匹手に入ったので、食べてみることにしました。

これまでクロホシマンジュウダイを食べたことはなく、今回が初実食。筆者は魚は基本的に刺身で食べるのが一番好きなので、クロホシマンジュウダイもお刺身でいただくことにしました。

クロホシマンジュウダイのお刺身(提供:椎名まさと)

薄っぺらそうな体の割には肉量が多く、近縁科とされるツバメウオの仲間を彷彿とさせます。そして身は白っぽく、英名で「Butterfish」と呼ばれるように、かなり脂がのっていることがうかがえます。

クロホシマンジュウダイのお刺身をいただく(提供:椎名まさと)

実際に食べて見たところ、とても美味しいものでした。

臭みはまったくなく、甘みすら感じられるほど。そして以前食したツバメウオと同じく、脂が非常によくのっており、身の量も多かったせいか、二日間かけなければこの量を食べることはできませんでした。

注意点として、この個体は長崎県のきれいな海で獲れた個体を刺身で食したレポートであり、内湾の奥の方や、河川の汽水域で獲れた個体の生食はすすめられません。臭みがあったり、寄生虫がいたりするおそれがあるからです。

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椎名まさと

魚類の採集も飼育も食することも大好きな30代。関東地方に居住していますが過去様々な場所に居住。特に好きな魚はウツボ科、カエルウオ族、ハゼ科、スズメダイ科、テンジクダイ科、ナマズ類。研究テーマは魚類耳石と底曳網漁業。

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