北海道の中でも北方に位置する知床半島の羅臼では、他ではなかなか食べることのできない変わった魚の丼物を提供しています。
今回は黒ハモ丼を紹介します。
黒ハモとは
黒ハモは名前に”ハモ”と付くものの、西日本でよく消費されるハモ(ハモ科)とは別のグループに属し、正式名称をイラコアナゴといいます。さらに、ややこしいことにマアナゴやクロアナゴといった我々に馴染みのあるアナゴ科の魚とも異なるグループの魚で、本種はホラアナゴ科に属する深海魚です。
イラコアナゴは水深約200〜3000メートルの深海に生息する魚で、国内では北海道から沖縄にかけて広く分布しています。イラコアナゴは主に深海釣りや底引き網で漁獲がありますが、大部分が底引き網で漁獲されています。
特に東北の底引き網では大量に漁獲され、イラコアナゴを専門に捕りにいく場合もあるそうです。真っ黒な体とハモのような体つきからカラスハモやオキハモと呼ばれ、醤油煮などに加工されています。
キンキ釣りの外道を名物に
羅臼町沖ではスケトウダラやマダラ、少量のキンキを対象にした延縄漁業が行われています。イラコアナゴはこの延縄漁で漁獲される、いわゆる外道のような存在であり、かつて羅臼では漁師の間で消費されることが多かったそうです。
羅臼町にある「知床食道」では10年ほど前からイラコアナゴを使った肉厚な黒ハモ丼を1,300円で提供しており、今では人気メニューとなっています。羅臼で水揚げされるイラコアナゴは大型で脂が乗っており、これを骨切りした後に秘伝のタレで蒲焼きにすることで、旨味を最大限に引き出しています。「知床食道」では多い時、一日100食売れることもあるそうで、新たな名物として注目が高まっています。
黒ハモは近所でも買える
イラコアナゴは”黒ハモ”として羅臼の名物になっていますが、実は全国のスーパーでごく普通に買うことができる魚です。
惣菜売り場などで安価に売られているアナゴの煮付けはイラコアナゴの場合が多く、そのほとんどが東北で水揚げされたものです。アナゴと比較して値段が安いことから、時にアナゴの代用として用いられることもありますが、負けず劣らずの味わいがあります。
一方で、肉厚な釣り物を蒲焼にした黒ハモ丼は羅臼でしか食べられません。イラコアナゴのように値段が付かなかった魚が名物になるのはとても良いことだと思います。
今後、様々な地域で、その地ならではの魚が名物になっていけば良いですね。
(サカナト編集部)