滋賀県立琵琶湖博物館は8月9日、龍谷大学の研究員と協働で、標本に基づいて記録した滋賀県初の「観賞魚メダカ」の報告を発表しました。
観賞魚メダカは見た目が綺麗になるような人工改良をされたメダカのこと。観賞魚メダカを野外に放流すると、自然に生息する野生メダカとの交雑により遺伝的攪乱を起こすなど、生物多様性にとって大きな脅威となります。このことから「第3の外来種」とも呼ばれています。
滋賀県の野外水域で「第3の外来種」観賞魚メダカを初確認 在来生態系に影響の恐れ、観賞魚の放流に警鐘-PR TIMES
観賞魚メダカが滋賀県内で初めて記録された
龍谷大学生物多様性科学研究センターの伊藤玄客員研究員と滋賀県立琵琶湖博物館の川瀬成吾学芸員らの研究グループは、2023年7月30日に滋賀県大津市田上里町の池で、2024年4月29日に琵琶湖南湖の湖岸で採集された魚類の形態的特徴を観察したところ、いずれの魚類も観賞魚メダカであると特定しました。
滋賀県および琵琶湖・淀川水域において、観賞魚メダカが標本に基づいて記録されたのは今回が初めてです。
観賞魚メダカとは?
野生のメダカは、池や河川、水路などに生息している小型の淡水魚で、皆さんも馴染み深い魚かと思います。では、観賞魚メダカとはどんなメダカなのでしょうか?
観賞魚メダカは、ある特徴が発現した変わりメダカを累代飼育し、その特徴を固定し品種化したものです。
2000年代初頭は普通種のみだったのが、黒い体色、赤い体色のものやアルビノ、ラメが入ったようにキラキラと輝く鱗を持つものや金魚のように鮮やかな模様を持つものなど、さまざまな特徴を持つメダカが作られてきました。その見た目の美しさから、アクアリストから人気を得ています。
一方で、観賞魚メダカはさまざまなメダカを人の手で累かけ合わせて累代飼育してきたメダカであるため、その遺伝子は野生のものとはかけ離れています。放流により野生メダカと交雑してしまうと、その地域で育まれてきた遺伝子を乱してしまいます。
また、繁殖しやすいということは身体が強いということでもあり、野生メダカと競合が起こると観賞魚メダカの分布のほうが広がりやすく、その地域特有の野生メダカはいなくなってしまう恐れもあります。
今回見つかったメダカは?
今回行った調査で見つかったのは青メダカ、青体外光メダカ(幹之メダカとも呼ばれる)に分類される観賞魚メダカです。
特に、今回採集された青メダカ3個体のうち1個体には、奇形とみなされる特徴である脊椎骨の湾曲がみられました。このことから、品種としては不十分だとみなされ選別された個体ではないかと考えられています。
こうした個体の遺棄放流は、各地の野外水域で確認された観賞魚メダカの特徴にも共通しているそうです。
観賞魚の遺棄放流に向き合う
見た目が綺麗な観賞魚メダカですが、野生に放すと生物多様性を崩してしまう要因になります。この問題は外来種で特に問題視されやすく、特にメダカは「野生にも生息しているから放しても大丈夫だろう」という考えのもと放流してしまう事例もあるのではないでしょうか。
飼育していた魚の放流による問題は、決して外来種や観賞魚メダカだけで起こるものではりません。さまざまな地域で魚が放流され、多種多様な問題が起こっています。
観賞魚メダカや外来種を飼育していなくても、魚を扱うすべての人にとって当事者意識を持って向き合わなければいけない問題だといえます。
(サカナト編集部)