タガメは水田や池に生息する水生昆虫です。かつて、日本では各地にタガメが生息していたものの、生息環境の悪化により個体数が減少。環境省の絶滅危惧Ⅱ類、特定第二種国内希少野生動植物種に指定されています。繁殖生態の理解は保全策を検討する上で非常に重要ですが、本種では解明されていない部分もあります。
そうした中で、長崎大学教育学部の大庭伸也准教授らの研究グループは、タガメを対象に野外調査と室内実験を実施。捕食と乾燥のリスクが低い場所を好んで産卵することを明らかにしました。
この研究成果は「Ecological Entomology」に掲載されています(論文タイトル:Ohba S, Ohata R, Watanabe R (2026) Desiccation and predation risks shape oviposition site selection in a giant water bug. Ecological Entomology)。
タガメの産卵場所
タガメの繁殖では、メスが水面から突き出た植物や棒に卵塊を産み付け、オスが卵塊に給水しつつ、アリなどの天敵から保護することが知られています。
タガメ(提供:PhotoAC)対して、オスの保護がない卵はアリに食べられてしまうことから、メスには産卵場所選好性があると考えられてきました。しかし、これまでタガメ亜科における産卵場所選好性の実態は解明されていなかったといいます。
そうした中で、長崎大学教育学部の大庭伸也准教授らの研究グループは、この謎を解明すべく、タガメを対象に野外調査と室内実験を行いました。
日陰や岸から離れた場所を好む
調査・実験の結果、タガメのメスは池の上空を覆う樹木の下を好み、アリが接近しずらい岸から離れた棒に、多く産卵することが明らかになっています。
タガメの卵塊(提供:PhotoAC)また、日陰になる場所や暗い面を好んで産卵する傾向も確認されているほか、卵塊を人工的に日向向き・日陰向きに配置した実験では、日陰向きの方が、有意に産卵率が高いことが示されました。
このことから、タガメのメスはアリが接近しにくい場所、卵を乾燥から保護できる日陰を好んで産卵し、孵化率を高めていると考えられています。
個体数の回復に貢献
今回の研究によって、タガメのメスがアリの捕食から卵塊を守れる場所や、乾燥から卵塊を守れる場所を選んで産卵していることが明らかになりました。
この成果は、タガメの適切な産卵環境を示しており、個体数の回復に大きく貢献することが期待されています。
(サカナト編集部)